『水栓』
水栓とは「水を出す機器」ですが、デザインが多肢に渡り、選定に関しても選べる内容が他機器よりも種類が多く、『見せる』『使う』の視点での検討が必須。
またメーカー側からの深い提案が無い限り、深く知る人は少ないのも、この『水栓』だと思います。
が、知れば知るほど奥深い『水栓』の種類・デザイン・使い勝手を理解すれば、もっとキッチンを使うのが楽しくなり、見るのも、お手入れするのも楽しくなります。
(※掲載写真は各社HPより抜粋させて頂いております)
種別
大きく分けて種別としては、下記内容があります。
【国産メーカー/海外メーカー】
【浄水器有/無】
【グースネット/スパウト】
この内容でざっくりと決めることが出来れば、数多ある『水栓』から希望の『水栓』が導き出されます。
それぞれの内容で重なる事も多いですが、まとめていきます。
国産メーカー
国産でメジャーなのは【LIXIL】【TOTO】で、他にも【takagi】【KVK】【SANEI】などもあり、各社様々な機能・デザインを備えた水栓があります。
安心・安定の品質、価格もリーズナブルな物が多く、馴染みのある形状の物もあります。
【LIXIL】
2011年に国内の主要な建材・設備機器メーカー、トステム、INAX 、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社が統合して誕生したのが【LIXIL】
建築に関連した様々な商材を扱う大企業で、『水栓』に関しても定評があるメーカー。
中でも近年、要望が多いのは『タッチレス水栓』のナビッシュ。
写真のように手をセンサーにかざすだけで水の出す・止める。の操作が可能で、手が濡れていても、汚れていても、水栓に触る必要が無いので、ストレスなく作業が出来る商品として人気があります。
また衛生面でも、触らない事のメリットがあり、洗面やトレイの手洗い器などでも多くのセンサータイプの水栓が普及しているので、時代の流れはタッチレス・センサーに向かってますね。
機能水栓では【ホース】【シャワー】に次いで、【タッチレス】というワードが打合せでも良く言われます。
【TOTO】
こちらもLIXILと肩を並べる大企業。1912年より続く衛生陶器の会社が【TOTO】
水栓金具は1946年より生産開始されたようで、長い歴史の中でデザイン・使い勝手を磨かれたメーカー。
センサーが苦手な方(意図せず出してしまう心配・出したいのに反応しない心配等)には接触して水を出す・止める操作が出来るタッチスイッチ水栓があります。
また、手元の操作だけではなく、フットスイッチという商品もあり、使う人に寄り添った『デザイン』『使用感』となってます。
【KVK】
1939年に創業した「水」を起点とした専業メーカー【KVK】
浴室・キッチン・洗面水栓やそれらに関連するパーツ類など、種類が豊富。
キッチン水栓もデザイン、特にカラーは国産メーカーの中でも選定数が多く、またLIXIL同様にタッチレス水栓も複数ラインナップがあり、キッチンカラーリングも含め、様々な視点での検討が出来るメーカー。
これからは他メーカーもカラー水栓で、如何にキッチンに同調させることが出来るか。という事も含め、商品開発が進めば、もっと検討幅が広がり、価格も安くなり、海外メーカーに負けない意匠になる事を密かに期待してます。
【takagi】
1961年創業のプラスチック中空成型機および金型の製造の会社で、1979年にタカギ設立。
浄水に特化したメーカーで、浄水器業界で初めて浄水器をハンドシャワー水栓のグリップに内蔵し、これまで存在しなかった蛇口一体型浄水器「みず工房」を開発され、マンション等に沢山採用されているメーカーです。
カートリッジの交換し易さ+デザインも追及されており、水栓のデザイン形状に合わせて、カートリッジ形状を変えてしまう。
使い勝手+意匠への着目が素晴らしいです。さすが浄水に特化したメーカーです。
他にもキッチンイメージに合わせて蛇口グリップ部分のカラーを木目調やシックなカラーにバージョンUPさせることも可能な水栓もあります。
(好みは分かれそうではありますが、他には無い仕様ですね)
【SANEI】
1954年に三栄水栓製作所として創業されたのが【SANEI】
水道用品の組立・卸販売からスタートし、1960年代後半より自社工場での生産を開始され、日本初のシャワー付湯水混合水栓(1967)を作ったのも【SANEI】とのこと。(HP参照内容)
攻めたデザイン水栓や、ワイヤレススイッチ付の水栓など、レパートリーも豊富にあり、KVK同様、選択肢が多くあります。
海外メーカー
有名なメーカーは【グローエ】【ハンスグローエ】がメジャーで、他には【ドンブラハ】【デルタ】【KWC】【コーラー】などがあります。
品質に関しては、世界中で使われているメーカーも多く、価格も意外とリーズナブルな物もあり、ちょっとでも拘りたいなと思っている人は一通り見る事をオススメします。
【グローエ】
ドイツのメーカーで1936年創業したのが【GROHE】
(創業者フリードリヒ・グローエ)
海外メーカーですが、2014年にLIXILのグループ会社になってます。
グローエで一番?メジャーな水栓が『ミンタ』かと思います。
(映え水栓で雑誌などでは『K7』を良く目にします)
『ミンタ』のデザインテイストで炭酸冷水器(現在は廃番)や水素水、また浄水一体の交換がしやすいモデルなどもあり、多性能な水栓とデザインが融合した商品があり、今後の展開も非常に気なるメーカーの1つです。
左が『K7』右が『グラシア(混合水栓一体型電解水素水整水器)』です。
価格はそれぞれ『K7』¥167,300-が『グラシア』が¥449,100-とのこと。
たかが水栓とは言えない価格設定。慎重に選ばないといけない価格帯です。
【ハンスグローエ】
1901年に創業されたドイツのメーカー【Hansgrohe】
(創業者ハンス・グローエ)
「眺めても使用しても楽しく、手になじみ、そして使うたびに心地よさを感じるエモーショナルなデザイン」とHPにも記載されていますが、「眺めても楽しい」というのは「デザイン」を考える上で重要なので、その観点を持って見ると、また違った一面が見えます。
昔ながらのスパウトタイプですら、どこか気品があり、飽きないデザイン。
また同社の別ブランド『AXOR(アクサー)』もあり(ブランド立上1993年)、デザイナーが機能美に拘って作った数々の水栓たちがあります。
また有料オプションになりますが、10色の特別仕上げの水栓にする事も可能です。
これがまたいい色展開で、強度も高く、金額相応な内容かと思うので、水栓拘りたい方は見てみる価値はあります。
(特にブロンズ系・ゴールド系が人気かなと思います)
グローエとハンスグローエは名前が似ているので、同じ会社?のブランド違い?とのお声も多いですが、別の会社です。創業者の名前が家族なので、似ているだけです。
【ドンブラハ】
1950年創業のドイツの高級水栓金具ブランド【DORN BRACHT】
こちらの水栓は(株)リラインスさんが正規輸入代理店されているので、他海外ブランド水栓なども扱われているので、高額水栓になるので、ショールームでの実物確認は必須です。
「宝石のように美しい」と言われるように、どの水栓も細部にわたる箇所まで考え・作り込まれている感じがあります。
写真右側の『メタ.02』シリーズのこの商品、価格が何と\853,270-(税込)とのこと・・・。水栓ではなく、安いキッチンだったら買えるレベルで驚愕。
他の水栓も数十万。タオル掛けなどのパーツ類ですら、10万超えの商品が沢山。
価格相応のクオリティ。と感じるかどうかは人それぞれですが、さすが「宝石のように美しい」と自他共に認めるメーカーだと個人的に思います。
【デルタ】
1954年に設立された【DELTA】はアメリカのメーカー。
日本では(株)ロッキーズコーポレーションさんが正規輸入代理店をされています。
タッチ水栓&カラー水栓&浄水器デザイン統一が出来るので、意匠重視の方にはオススメのメーカーです。
またソープディスペンサーも近年、要望として多く上がりますが、デルタでは浄水水栓同様、ソープディスペンサーもデザインバリエーションが多く、お気に入りのデザインで統一出来るのが魅力です。
価格もそこまで高額ではなく(とは言っても、20万超えの内容もありますが)、お手頃な商品も多い。
あと、別ブランドの【BRIZO(ブリゾ)】はハイエンドモデルのラインナップを揃え、多様な要望に応えられるメーカーだと思います。
ただ、海外メーカー(特にアメリカ製)は水圧が抑えられている事があり、水の出が地域や建物の属性によっては少なく感じる場合もあるので、採用時には注意が必要です。
(アメリカでは一般的に水圧が日本より高い為)
同じ水圧に対する流量に関して、ざっくりですが国産水栓を(100%)とした場合、ドイツ(80~100%)、アメリカ(55~70%)くらいになる感じです。
※目安なので、気になる方は採用検討品番の流量をメーカーに問合せしてみてください。
特に給湯器の内容でも水圧が変わるので、お湯の出が悪い。給湯器によってはお湯が出ない。なんて事も可能性としては薄いですがあります。
【KWC】
スイスの名門水栓メーカー【KWC】
オルゴールの製造会社として1874年に創業した企業で、精密機械で培われた技術を活かして1897年より水栓の製造を始めた老舗の水栓メーカーです。
吐水口部にLEDが仕込まれている水栓(ZOE/EVEシリーズ)や、操作レバーが極細のデザイン(ONOシリーズ)だったり、驚きのある機能美を実際に実現されている水栓があります。
LED付水栓も操作レバー極細も実際に見たことがありますが、初見では理解出来ない内容で、ただただ驚き、こんな時代になったのか。とワクワクもしました。
取扱されている日本の会社は沢山ありますが、取扱数が多く、見やすいHPなのは(株)エスユー技研さんかなと思います。
【コーラー】
アメリカで1873年創業の水道器具、家具、電気機器、エンジン、発電機の国際大手メーカー【KOHLER】
日本では2社、正規輸入販売代理店があります。それが『日鉄物産マテックス(株)』と『(株)JPK』です。
こちらも注意事項としてデルタの内容でも記載しましたが、水圧問題があるので注意ください。
「止水栓の箇所で水圧が0.20MPa(推奨は0.25MPa以上)~0.75Mpaの範囲内である事を予めご確認ください。エコキュートと併用する場合には、1次水圧が弱くなり、吐水の水量が少なくなる事象が発生いたします」
(内容:日鉄物産マテックスさんHPより)
「アメリカでは一般的に水圧が高いため、水栓金具に抵抗(整流盤・チェックバルブ)を設けております。快適にご使用いただくために必要最低水圧を確保してください。必要最低水圧が確保できない場合、流量不足や給湯器動作不良などが発生する恐れがあります。(特に電気温水器は水圧が低くなることが多く注意が必要です。但し最低水圧が確保できる電気温水器のセットは可能です。)」
(内容:JPKさんHPより)
モダンテイストからクラシカルテイストまで、幅広いキッチンデザインに合わせて選定でき、更にタッチレスなどの機能も付いている水栓もあります。
右側は『ポットフィラー』という名称の水栓。
普通は水を溜めた重たいお鍋をコンロの上に移動させる。という動作が必要ですが、この『ポットフィラー』があれば、コンロの上にセッティングしたお鍋に、直接注水することができる。そんな水栓です。
海外(アメリカで多い?)の事例ではよく見かけますが、日本ではあまり需要が無いので、ほとんど採用されず、私も13年キッチンの営業をしてますが、問合せは3~4件、採用実績は1件だけです。
(その時は壁出しの『ポットフィラー』を採用しました)
浄水器有/無
初めから見て頂いている方は、既に容量オーバーかもしれませんが、水栓の性能で採用・不採用悩まれるのが、【浄水器有/無】かと思いますが、ここからは分かりやすい内容です。
浄水器は今では知らない人はほとんどいない機能かと思いますが、必要かどうかは人それぞれ。
日本では基本、水道水はそのまま飲んでも問題ない事がほとんどで、さらに綺麗にすることが必要かどうか。という感じで選択する内容です。
■ウォーターサーバー。も普及していたり、■定期便で水を購入。されている方もいらっしゃいますが、コスパ&使い勝手は■キッチン浄水器水栓。がある方が良いと個人的には思ってます。
コスト比較
■ウォーターサーバー
ビジネスモデルによって費用体系が変わりますが、水道直結型はサーバーレンタル費用が掛かり、サーバー無料の場合はボトル代(水)が掛かります。
サーバー代の場合、月額\3,000-前後が多く+水道代が掛かり、ボトル代の場合、12Lで\2,000-前後。
水を沢山消費する方はサーバーレンタル型、水質に拘る方はボトル型での検討をされると思います。
■定期購入
アマゾンや楽天など、オンライン購入が手軽に出来、尚且つ定期購入すると買いに行く手間や運ぶ労力もなく、また価格も安くなったりします。
いろんなメーカーのお水があるので、好みの1本を選ぶのが大変ですが、価格的には2Lボトル1本約\100-~くらいの価格なので、価格だけで見るとウォーターサーバーの12L\2,000-と比べると割安です。
しかし、ペットボトルの処分にお金が掛かるケースも地域によりあるので、それらも検討時には確認必要。
■キッチン浄水器水栓
こちらは水道水を利用するので、水道代だけでOK。また本体価格は賞品にも寄りますが、\50,000-前後からあり、カートリッジもタイプにより3~4か月で交換の物から1年での交換の物まであり、どのタイプも凡そ年間費用としては、\15,000~20,000-程度が一般的です。
※一部特殊なカートリッジはもう少し高い商品もあります。
維持管理比較
■ウォーターサーバー
水道直結型は定期的なカートリッジの交換が必要で、ボトル型は無くなれば入替が必要。
また本体も大きいので、設置場所によっては汚れが付くので、定期的に拭く必要があります。
(通電しているタイプだと、コンセント周り・配線も清掃必須)
■定期購入
飲んだ後のペットボトルの処分が必要。地域によってはゴミ出しの日時が決まっている事もあるので、その場合はしばらく自宅で保管する必要があるので、沢山飲む方は処分までの置き場確保が必要。
■キッチン浄水器水栓
カートリッジは数か月~1年毎の交換のみで、日常は水栓本体を拭く程度でOK。
交換時は種類により、水栓本体のカートリッジ交換orシンク下収納の奥にカートリッジがある物があるので、その場合は少し交換が大変な場合があります。
左側がシンク下設置の1年交換タイプ。右側はスパウト設置の4か月交換タイプ。
シンク下設置の場合の状況。
浄水器まとめ
水に対しての価値観はそれぞれ違うので、一概には言えないですが、私は長く使う前提でキッチン浄水器水栓が一番オススメです。
水を飲む事を意識して行っている人は、水の味であったり、気軽さであったりが重要で、水道水はちょっと・・・と懸念され、私も家で炭酸水を良く作るのですが、水道水で作ると、美味しいのは美味しいですが、ちょっと水道水の感じが出て、ちょっとなぁ~。と思う事があり、またお酒を炭酸で割る場合も、ちょっと味が変わっているような気がするので、拘る方は使い方含め、検討しましょう。
小さいお子様がいらっしゃる方は、浄水のお湯があれば。ということで、ウォーターサーバーだと水・お湯の選択が出来る商品もありますし、外出先で良く飲む。という方は500mlのペットボトルだと気軽に持ち出せ、また外出先で処分も出来るので、お手軽だったりします。
キッチン浄水器
水に拘る方からお伺いする事が多いメーカーは【シーガルフォー】
個人的に採用が多いのは【クリンスイ】
色んな水栓に対応させるには【キッツマイクロフィルター】
上でも書いた、浄水特化メーカー【takagi】
これ以外にもメーカーは沢山ありますので、また別途浄水についてはまとめます。
グースネット/スパウト
これは、見た目のデザインについての内容。
【グースネック】
『ガチョウの首のように湾曲したデザインの水栓』の事を総称して【グースネック】言います。
グースの写真と【グースネック】の写真を並べてみました。納得ですね。
デザイン水栓で最も種類が多いのがこの【グースネック】形状で、色んなメーカーから出ています。
デザイン性は高く、主張するので、意匠に拘る方は【グースネック】の選択が基本になりつつあります。
本体サイズが大きく、吐水口位置も高くなる事が多いので、大きな鍋に水をためやすかったり、シンク作業の邪魔になりにくかったりします。
【スパウト】
本体から蛇口先端の吐水口へつながるパイプの事を【スパウト】と言います。
こちらは昔からある形状なので、馴染み深い方も多いと思いますが、水栓と言えばこの【スパウト】形状が主流でした。
このような形状が【スパウト】です。
操作性の安定感や吐水位置も低い事が多いので、水ハネリスクは抑えられます。
昔ながらの~と思いがちですが、海外メーカーでもデザインされた水栓も多くあるので、地味ではない、カッコイイ・カワイイ水栓も多くあります。
全体まとめ
如何でしたでしょうか。
『水栓』=『水を出す機器』ですが、その広さ(メーカー数)×深さ(商品数)は他機器を圧倒的に凌駕する量があります。
しかし実情はキッチンメーカーが決めている数種類の中から、なんとなく決める人が多いのが残念な機器No1です。
知れば知るほど、その広さ×深さに驚くばかりです。
なので、掲載している写真も品番は書いてない理由は、割と早いサイクルで新商品や品番が変更されたりする事もあるので「こんな水栓もありますよ~」という軽い感じで個人的に気になる内容の写真をお借りして掲載してます。
量があり過ぎるので、ここでは書ききれないので、分かりやすく各社のHPリンクを載せているので、じっくりと見てもらえたらと思います。
(私も仕事柄、カタログは良く見ますが、HPはあまり見ないので、今回色々な発見がありました)
皆さんの理想とするキッチンに似合う1本の水栓を見つける為には少なくても書いているメーカーや内容は押さえておいた方が良いです。
水栓を決める流れは【この見た目!】なのか【この機能!】なのかで大きく絞り、そこから徐々に自身の希望・理想に合い、キッチンにも似合う。そんな1本を決めましょう!
そして、気になるメーカー・商品があれば「どのような操作感なのか」「どのようなサイズ感なのか」
見て触る事でより理解出来、納得した上で採用出来るよう、実物をショールームで確認する事をオススメします。
しかし、水の出方まではショールームで体感出来ない事も多いので、そこは動画サイトや、最近は各社HPでブランドイメージ動画や各水栓の動作動画もあったりすので、チェックしましょう。
気になるメーカーや使っている水栓についてのあれこれなど、あればコメント頂けると嬉しいです◎
コメント